格闘技界初「最強」の呪縛からの脱却! SEI☆ZAの突き抜け方は凄い!/谷川貞治

2017.02.3

テーマ『1.19 SEI☆ZA旗揚げ大会とは何だったのか?』


文◎谷川貞治(巌流島イベントプロデューサー)


格闘技イベントの一番の売りは何か? それを一言で表すならば「最強」。プロレスも格闘技も「最強」を競い合っているイメージで、お客は集まり、興行自体を巨大化していった。だから、一時「最強」という言葉は、いろんな団体が使っていたし、実際に力道山やアントニオ猪木、UWF、K-1やPRIDEは、「最強」のイメージで業界のトップに君臨した。

K-1は「立ち技世界最強トーナメント」を決める大会のイメージがあったから支持をうけたし、PRIDEが「60億分の1の男」を決める大会と言っても納得できた。格闘技界でトップに立つには、この「最強」のイメージは不可欠だったのだ。

格闘技に限らず、スポーツはそもそも「最強」、つまりジャンルの頂点をめざす舞台が最高峰だと言われている。簡単にいうと「オリンピック」。テレビが一番扱うのもオリンピック。ということは「オリンピック」以外の全ての大会は、オリンピックへの予選となり、実は最強を争っていない大会、もしくは「日本大会」「大学大会」「高校大会」など、限定した最強決定戦にすぎない。

ここは極めて重要だ。今、日本の団体で「最強」を謳い文句にしている団体は少ない。おそらくイメージ的にも、UFCを除いては「最強」という言葉を使っても笑われるだけだろう。だったら、本当に格闘技界のトップに君臨するには、大会の規模、システム、選手の質でUFCを越えなければならない。それしか「最強」のイメージを取り戻すことはできない。その「最強」のイメージを取り戻さない限り、真の格闘技復活はない。

そうしない限り、他の団体は全て亜流、もしくは予選、マイナーな大会となってしまう。しかし、格闘技団体としてはそれを素直に認めたくない。つまり「最強」を捨てることで、売りにするものは何か? ということが明確に打ち出せないのだ。その中途半端さが一番良くない。例えば総合格闘技のイベントが、「ウチはUFCの登竜門」と言ってしまえば、それはそれでスッキリするし、分かりやすい。そうではなく、「ウチはUFCとは違う」というならば、それがハッキリと分かるコンセプトを打ち出さなければならない。

私が『巌流島』という新しいコンセプトを打ち出したのは、そうした一面もある。一部、誤解している人もいるが、私は総合格闘技やUFCが嫌いで、MMAというものを否定しているのではない。そもそもグレイシー柔術が出てきて、UFCが誕生した時、格闘技マスコミでさえ批判的だったものを誰よりも支持し、応援したのは『格闘技通信』編集長時代の私だった。そうでしょ?

でもUFCがある限り、別の最強を競う舞台を作らなければ、どうしても比較されてしまう。それが「武道」というコンセプトであり、異種格闘技戦=他流試合だった。ところが、SEI☆ZAを見て驚いたのは、巌流島のように別の方法論を見せているのではなく、「最強なんて競ってないよ」と最初から胸を張って、堂々としていることだ。


SEI☆ZAチームの女の子は、ハッキリ言って強くない。UFCに出ている女子選手や、RIZINに出ているRENAクラスと闘ったら、殺されそうな選手も多い。でも、SEI☆ZAはそんなこと百も承知。「巌流島に出ている選手はレベルが低い」と仮に言われたら私はムッとするが、SEI☆ZAは胸を張って「そりゃそうだよ」と言うだろう。

だって、SEI☆ZAはそんなところを見てもらいたいんじゃないから。こんな格闘技団体はある意味初めて。突き抜けている。SEI☆ZAは武道好きの可愛い女の子が、日本で修行して、その成果を見せる場。強い弱いとか関係なく、彼女たちがいかに真剣に武道に打ち込み、頑張っている姿を見せようとしているからだ。もちろん、試合なので勝負は競っている。しかし、勝敗を見せているのではなく、彼女たちの頑張り、挫折、笑顔、涙を見せているのだ。

考えてみれば、「最強」が見せられない大会がファンに訴えられるのは、そこしかないはず。しかし、どの団体もSEI☆ZAほど、そこが割り切れない。だから、中途半端な「最強」を見せてしまう。そこにファンもどこかしっくりこない。モヤモヤしてしまう。「だって、あの選手、UFCでは勝てないでしょ? それがチャンピオン?」。そんなふうに見られてしまう。しかし、SEI☆ZAは最初から「最強」の放棄。「最強」からの脱却。そこが突き抜けている。めちゃ新しい。堂々としている。「一番じゃないとダメなんですか?」と、言われた気分。

これがどんな人気が出てくるのか、これから注目したい。ルールや煽りVTRもその意味で改善するところがまだまだある。ルールは、いかに彼女たちが頑張っている姿を引き出せるかを考えたルールにした方がいいし、煽りVTRはもっと彼女たちの日常を総集編のように見せた方が、はじめてのファンには分かりやすかっただろう。でも、可能性はある。流行るかな? 流行り始めたら、女子ということで早いだろうな。

前にも書いたが、これは新しい女子プロレスでもあるし、格闘技版のアイドルビジネスになるかもしれない。全然、女子カクじゃないし、巌流島とも違う。成功の鍵は、いかにそのことをファンに気付かせるかだろう。

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